イベントレポート

東北大学オープンキャンパス(2010年7月28〜29日)

東北大学オープンキャンパス
【日時】平成22年7月28〜29日 10:00〜15:00(両日とも)
【場所】理学総合棟、物理B棟、ニュートリノ科学センター
【案内】http://www.phys.tohoku.ac.jp/open_campus/2010/index.html


 本学のオープンキャンパスが7月28・29の両日、各キャンパスで行われ、本学への進学を希望する高校生らが全国から集まりました。理学部物理系でも、在校生や教員らが高校生らを出迎え、研究施設や研究内容などを紹介しました。


理工農の若手女性研究者らが女子高校生対象に研究紹介

28日、女子高校生対象に開催された理工農の若手女性研究者らによる「ランチタイム for 女子高校生」のようす

 理学部講義室では、女子高校生の理系進学率向上をねらいとした催しが行われました。28日は初の試みとして、理工農の若手女性研究者らが研究を紹介する「ランチタイム for 女子高校生」が開かれ、会場一杯に女子高校生およそ90人が詰めかけました。

 講演会では、天文学専攻の東谷千比呂さんが「天文学者って何するの?宇宙の果てを探る研究の舞台裏」、化学専攻の海老根真琴さんが「とある化学者見習いの日常と非日常」と題して、研究の面白さや大変さ、その魅力などを紹介しました。

天文学専攻の東谷千比呂さんによる講演会のようす

 このうち天文学専攻の東谷さんは、ハワイ島のマウナ・ケア山にある国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」での研究について、様々な画像を交えながら紹介。すばる望遠鏡にふさわしいカメラの設計・製作も天文学者の仕事のひとつであることを説明しました。

 東谷さんは「他の誰も知らないことを、一番最初に知れることが一番おもしろいです。そのためのツールをつくることが楽しいです」と研究の醍醐味を語り、「現時点での得意・不得意は関係ありません。おもしろければ、できるものです」と強調しました。

 研究と子育ての両立についても「子育てをしながら研究をしています。子どもも何とかなるものです」と経験談を披露。「自分がやりたいことをやるのが一番」と女子高校生らを激励しました。

若手女性研究者らに和やかな雰囲気で質問する女子高校生ら

 講演会後は、理工農の若手女性研究者10人がポスターで経歴や研究内容を紹介。女子高校生らは若手女性研究者らに「大学で学んだことを仕事にするにはどうすればよいですか」「地球物理と地球科学の違いは何ですか」「宇宙論はどの先生から学べるのですか」などと質問をしていました。

 静岡県から参加した県立高2年の女子生徒は「東谷さんのお話を聞いて、天文学者のイメージは実際とは違うことが知れておもしろかったです。大学の資料やホームページを見るだけではよくわかりませんでしたが、実際に研究している方から直接お話を聞いたことで、具体的に何を研究できるのかがわかり、とても参考になりました」と話していました。

◆他の若手女性研究者とのつながりできた
 「ランチタイム for 女子高校生」で講演した東谷千比呂さん(天文学専攻)の話

東谷千比呂さん(天文学専攻)

 小中高校生の頃に星占いや星座等に興味を持つため、天文学は潜在的に女子にも人気がある学問だと感じました。実際に、講演会後に私のところへ質問に来た女子高校生は、天文学を希望している生徒でした。

 また、今回の催しをきっかけに、東北大学の中にも子育てをしながら研究をしている人が他にもたくさんいることがわかり、私自身も励みになりました。研究教育義務のある助手以上の役職は会議などで集まる機会がありますが、わたしたちポスドク同士で集まる機会はないため、お互いに知らないままです。今回の催しで、個人的なつながりができたこともよかったと思います。


物理学の魅力、気軽に触れて 物理サイエンスカフェ

28日に行われた物理サイエンスカフェのようす

 お茶を飲みながら気軽に物理学を学べる「物理サイエンスカフェ」には、高校生らおよそ20人が集まりました。28日は石原純夫准教授が講師を務め、「超伝導のヒ・ミ・ツ」と題した講義を行い、高校生らが熱心に聞き入っていました。

 サイエンスカフェでは、まず超伝導とは何かについて、石原准教授がユーモアを交えながらわかりやすく紹介しました。続いて、簡単な量子力学入門と超伝導のしくみについての解説がありました。

 石原准教授は「次々と新しい超伝導体が発見されており、これまでの理論では説明ができなくなってきています。実験研究も理論研究も、まだまだわからないことだらけです」と話し、「東北大学は、超伝導研究の国際的なメッカです。先生と学生が一緒になって、たくさんの発見をしています。皆さんも我々と一緒に研究をしましょう」と呼びかけました。

 講義後は、高校生から「なぜ超伝導で磁石は浮くのですか?」「超伝導の最高転移温度は160Kですが、将来的にはどれくらいを目指したいのですか?」「リニアモーターカーと超伝導はどう違うのですか?」「超伝導の研究が進むと、例えば工業製品などではどのような価値があるのでしょうか?」などといった質問が多数出されました。

◆なぜだろう?と思う気持ち大切に
 「物理サイエンスカフェ」で講師を務めた石原純夫准教授(理学研究科物理学専攻)

石原純夫准教授(物理系物性理論)

 超伝導は非常におもしろい現象です。特に物性物理は、素粒子物理と比べて、一般の人にあまり知られていません。超伝導を題材に、物性物理のおもしろさが伝わればと思い、高校生にも理解できるよう話すことを心がけました。

 実際に講義を行い、高校生が思ったよりも超伝導に興味を持ってくれました。なぜ超伝導が起きるのか不思議に思い、メカニズムに興味を持ってくれた人が多くいたことがよかったですね。

 研究をする上で動機が大切ですが、そのひとつの原点は、「なぜだろう?」という素朴なものです。「どうして、こうなるのだろう?」という素朴な疑問が、研究する上でも非常に大切です。自然を良く見て、不思議だなと思う気持ちを大切にしてください。

◆科学好きにとって良い大学
 「物理サイエンスカフェ」に参加した新林雅也君(秋田県鷹巣高校2年)の話

新林雅也君(秋田県鷹巣高校2年)

 物理の量子力学等に興味があり、物理サイエンスカフェに参加しました。普段は『Newton』などの雑誌を読んでおり、「超伝導」という言葉自体は耳にしていたものの、細かいところまではよくわかりませんでした。今回の物理サイエンスカフェに参加して、超伝導の正体がだいぶつかめたので、参加して良かったです。

 東北大学は日本でもレベルが高い大学だと思うので、一度東北大学を実際に訪れることで、進路の目標や参考等になればと思い、オープンキャンパスに参加しました。物理学科の展示や学生さんの説明もとてもわかりやすく、自分が将来大学で学びたいこと・研究したいこと等を明確にしてくれるようなオープンキャンパスでした。

 東北大学は、科学が好きな人にとって、とても良い大学だと思いました。やはり一度、実際に来てみるべきだと思いました。



理系の女性研究者が女子高校生に研究紹介/東北大オープンキャンパス