佐藤繁東北大学名誉教授のご配慮を受けて、以下の要領により泉萩会に学術賞、泉萩会奨励賞を設置する。
記
| 受賞者氏名 | 受賞の業績 | |
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| 第3回 (H.23) |
佐藤 宇史 平成9年物理学科卒、平成14年物理学専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科物理学専攻 准教授 |
高分解能光電子分光による銅酸化物及び鉄系高温超伝導体の電子状態の研究 |
| 伊藤 洋介 平成9年宇宙地球物理学科卒、平成14年天文学専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科天文学専攻 助教 |
重力波天文学の理論的研究 | |
| 長谷川 拓也 平成10年宇宙地球物理学科卒、平成16年地球物理学専攻博士課程修了、(独)海洋研究開発機構 研究員 |
太平洋熱帯域における海洋表層貯熱量の研究 | |
| 第2回 (H.22) |
遠藤 基 平成12年物理学科卒、平成17年物理学専攻博士課程修了、現在、東京大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
インフレーション宇宙におけるグラビティーノ過剰生成問題の研究 |
| 大槻 純也 平成15年物理学科卒、平成20年物理学専攻博士課程修了、現在,東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
近藤格子模型に基づいた強相関 4f 電子系の理論的研究 | |
| 第1回 (H.21) |
是枝 聡肇 平成12年物理学第二専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
高分解能光散乱分光による量子常誘電体の低エネルギー素励起の研究 |
| 萩野 浩一 平成10年物理学専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科物理学専攻准教授 |
低エネルギー重イオン核融合反応の理論的研究 |
第3回泉萩会奨励賞(平成23年度)の候補者として、物理学専攻長より1名、天文学専攻長より1名、地球物理学専攻教授より1名、合計3名の推薦があった。2回の選考委員会(9月9日、16日)で慎重審議した結果、3名とも水準に達してのみならず、分野が異なる3名の間で優劣が付けがたいこともあり、3名を同時授賞として推薦することとした。
| 受賞者氏名 | 佐藤 宇史 平成9年物理学科卒、平成14年物理学専攻博士課程修了 現在、東北大学大学院理学研究科物理学専攻 准教授 |
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| 受賞の業績 | 高分解能光電子分光による銅酸化物及び鉄系高温超伝導体の電子状態の研究 (High-resolution photoemission study of electronic states in cuprate and iron-based high-temperature superconductor) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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佐藤宇史氏は、これまで光電子分光装置の高性能化に取り組み、エネルギー分解能や最低到達温度において世界最高水準の性能を有する光電子分光装置を建設した。これを用いて、酸化物系高温超伝導体や最近見出された鉄系高温超伝導体の超伝導発現機構ついて以下の重要な知見を得た。
① 電子型高温超伝導体の超伝導ギャップの波数依存性の直接観測[業績1]
電子型とホール型の超伝導機構が同じであるかどうかは、高温超伝導体における基本的問題である。ホール型に比べエネルギースケールが1桁小さい電子型高温超伝導体Nd_{2-x}Ce_xCuO_4の超伝導ギャップの波数依存性の直接観測に世界で初めて成功し、超伝導ギャップが異方的なd(x^2-y^2)波対称性をもつことを明らかにした。
② Bi系高温超伝導体での準粒子構造の発見
Bi系高温超伝導体のブリルアンゾーンのアンチノード付近に現れる準粒子構造(キンク)を世界で初めて見出し、その波数および温度依存性から高温超伝導発現における磁気的相互作用の重要性を指摘した。
③ 高温超伝導の発現に関わる磁気揺らぎ
高温超伝導の駆動力が磁気的なのかそれとも格子振動なのかという基本的問題である。この問題に対して、高温超伝導体に微量の磁性および非磁性不純物を添加して、フェルミ準位近傍のエネルギーバンド分散の変化を高分解能で測定する電子状態の「磁気的同位体効果」を研究し、超伝導に関与するアンチノード領域の電子が磁気的な揺らぎと強く結合していることを見出した。
④ 鉄系高温超伝導体の電子構造[業績2]
鉄系高温超伝導体について、世界に先駆けて超高分解能光電子分光測定を行い、超伝導ギャップや擬ギャップを見出し、その超伝導発現機構解明の手がかりを得た。
以上のように、佐藤氏は、高分解能光電子分光装置の高性能化、および、それを用いた高温超伝導体の研究において大きな貢献をしている。よって、佐藤氏は萩会奨励賞相当と判断される。
| 受賞者氏名 | 伊藤 洋介 平成9年宇宙地球物理学科卒、平成14年天文学専攻博士課程修了 現在,東北大学大学院理学研究科天文学専攻 助教 |
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| 受賞の業績 | 重力波天文学の理論的研究 (Theoretical study on gravitational wave astronomy) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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約百年前に提唱された一般相対性理論により存在が予言されている重力波は未だその直接検出に成功していない。この課題は基礎物理学における重要な課題であるのみならず、有望な重力源とされるブラックホール連星や中性子星連星などの相対論的連星系の研究にとっても極めて重要である。現在、世界各地で重力波検出器の建設が予定されており、天文学の重要なフロンティアになりつつある。ここで必要となるのは、相対論的連星系に対して、その運動を理論的に高精度で予測することである。この問題を一般相対性理論で扱つかうことは解析的にも数値計算上でも極めて困難である。この困難を回避する方法としては、ポストニュートン(PN)展開がある。PNは、一般相対性理論のニュートン極限から出発し展開パラメタ (v/c)^2に関して近似の次数を上げてゆく方法であり、問題を質点力学の枠内で扱うことを可能とする:nPN(n次のPN)展開の精度は (v/c)^{2n}である。これまでの研究の場合、2PN方程式までは正確な結果が知られていたが、3PN方程式は不定定数を含んでいた。伊藤氏は、これまでとは別な方法を用いて、3PN方程式を正確に導出することに成功した[業績1]。この成果は氏の博士論文および研究論文としてまとめられた。また、PN展開に関するレビュー論文も執筆している。
伊藤氏はその後、米国の重力波検出プロジェクトにおいて中心的な役割を果たしている研究施設のあるドイツ・マックスブランク研究所および米国ウィスコンシン・ミルウオーキー大学に移って、重力波データ解析の研究を行った。また、単独中性子星からの重力波検出のためのデータ解析や解析パイプラインの信号特性解析などに関して理論面からの寄与をした[業績2]。
以上により、伊藤氏は重力波天文学の理論的研究において優れた研究成果を挙げているのみならず、今後もこの分野の発展に貢献するものと期待される。よって、伊藤氏は泉萩会奨励賞相当と判断される。
| 受賞者氏名 | 長谷川 拓也 平成10年宇宙地球物理学科卒、平成16年地球物理学専攻博士課程修了 現在,(独)海洋研究開発機構 研究員 |
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| 受賞の業績 | 太平洋熱帯域における海洋表層貯熱量の研究 (Study on Upper Ocean Heat content in the Equatorial Pacific Ocean) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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東太平洋の赤道付近で海面水温が上昇するエルニーニョ現象が発生すると、その影響が地球上の様々な地域の天候変化に波及し、大きな気象災害につながることが多い。大気と海洋が密接に関連する代表的な大規模大気海洋相互作用として、多くの研究者の注目を集め、活発に研究されてきた。
長谷川拓也氏は、これまで海面水温に重きを置いたきらいがあったエルニーニョの研究に、海洋表層貯熱量(Upper Ocean Heat Content = OHC)の視点を新たに導入し、数々の新知見を見出してきた。2003年に発表した2編の論文[業績1、2]は、代表的な業績として、多くの研究者に引用されている。まず、業績(1)では、エルニーニョに伴うOHCの正偏差が、エルニーニョ終息後も北半球中線度(北緯15度付近)において西方伝播し、再び西太平洋にもどるというOHC変動サーキットが太平洋熱帯域に存在することを発見した。これは、エルニーニョ発生予測に大いに資するもので、国内外の研究者に大きなインパクトを与えた。
長期間にわたって蓄積された海洋観測資料(主に、水温)を用いて、全球の様々な海域で、10年以上の時間スケールを有する変動現象が発見されるようになった。業績(2)では、OHCを有効に活用し、赤道域にも準十年変動が存在することを新たに見出した。
これらの研究をベースに、エルニーニョ時にOHCが大気に放出される仕方には幾つかの異なった形態があること(2006年発表論文)、北太平洋亜熱帯循環系でもOHC偏差の数十年スケールを持つサーキットがあること(2007年)、南半球ではOHC偏差のサーキットが形成されないこと(2008年)、を明らかにし、活発な研究活動を展開している。
長谷川氏は、OHCという新しい観点から、エルニーニョを含む熱帯赤道域の長周期大気海洋変動研究に新風を吹き込み、この分野の発展に大いに貢献している。よって、長谷川氏は泉萩会奨励賞相当と判断される。
第2回泉萩会奨励賞の候補者として、物理学専攻長より2名の推薦があった。2回の選考委員会(9月7日、14日)で慎重審議した結果、本年度の泉萩会奨励賞として遠藤基氏(東京大学助教)と大槻純也氏(物理学専攻助教)を推薦することが全会一致で決定された。
| 受賞者氏名 | 遠藤 基 平成12年物理学科卒、平成17年物理学専攻博士課程修了、現在、東京大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
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| 受賞の業績 | インフレーション宇宙におけるグラビティーノ過剰生成問題の研究 (Study of gravitino overproduction problem in inflationary universe) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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宇宙の地平線問題および平坦性問題と整合し、宇宙論におけるパラダイムとなっているのは、初期宇宙の指数関数的膨張に基礎をおくインフレーションシナリオである。このシナリオは宇宙背景放射の観測によってその存在が明らかになったスケール不変な密度揺らぎによって支持されている。このシナリオでは、膨張の原動力となるインフラトンが指数関数的膨張の後で他の粒子に崩壊することによって、高温高密度の宇宙(火の玉宇宙)が生成される。この過程は宇宙の再加熱化(reheating)と呼ばれる。ところが、素粒子標準理論を包含した量子重力理論が未完成であるため、インフレーションシナリオの枠内でも様々な理論モデルが可能である。また、各モデルは未知のパラメタを含んでいる。量子重力理論の有力な枠組みとしては超対称性を取り入れた超重力理論がある。この理論には、グラビトン(重力子)の超対称パートナーであるグラビティーノ(中性フェルミ粒子)が含まれる。
遠藤氏は超重力理論の枠組みの範囲でインフレーション宇宙に関する理論的解析を行い、宇宙再加熱過程に対する重力の効果を詳細に調べた[業績1, 2]。その結果、定説とは異なり、グラビティーノが一般的にかなり多く生成されることが判明した。この結果と現在の宇宙に関する観測データを比較することにより、各種のインフレーションモデルに含まれる未知のパラメタの値に対して強い制限を与えることに成功した。また、これらの研究はインフレーション後の宇宙再加熱のメカニズム、さらには超対称性の破れの機構の正体に迫る道筋を与えるものと期待される。
以上により,遠藤氏は、発展の初期段階にある素粒子的宇宙論の分野において重要な成果を挙げるとともに、引き続きこの分野を牽引するものと期待される。よって、遠藤氏は泉萩会奨励賞相当と判断される。
| 受賞者氏名 | 大槻 純也 平成15年物理学科卒、平成20年物理学専攻博士課程修了、現在,東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
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| 受賞の業績 | 近藤格子模型に基づいた強相関 4f 電子系の理論的研究 (Theoretical study of strongly correlated 4f-electron systems based on the Kondo lattice model) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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結晶中の4f 電子系には強い電子相関が働き、4f 電子は状況に応じて局在性・遍歴性の両方の性質を示す。例えばRKKY 相互作用による磁気秩序状態は4f 電子の局在性の現れである。他方,4f 電子が伝導電子との混成効果により遍歴的性質を得ると,有効質量の大きい重い電子状態が実現する。ところが、重い電子系は理論的研究が極めて困難な強相関量子多体系に属する。そのため、重い電子系の本質を取り込んでいると考えられている近藤格子模型―伝導電子の海に局在スピンが周期的に配列されているモデル―が理論的研究のターゲットとなっている。候補者は,新しい数値計算手法(連続時間量子モンテカルロ法)を発展させ,これと動的平均場理論を組み合わせて近藤格子模型を研究し,目覚ましい成果を挙げた。以下,上記2論文の成果を分けて説明する。
(1) 近藤格子模型における新たな相の発見
近藤格子模型の安定相として,常磁性状態や強磁性・反強磁性秩序状態が既に知られていたが,伝導電子の密度によっては,電荷密度波(CDW)状態も実現することを明らかにした。このCDW 転移は近藤効果に起因し,基本的な模型で起こりうる新しい秩序という点で大きな意義がある。
(2) フェルミ面に反映する電子の局在性と遍歴性の解明
重い電子系の基本的問題として、フェルミ面の問題がある。すなわち、4f 電子が局在しているか否かにより伝導電子数が変化するので、それがフェルミ面に反映されるのではないかという問題である。しかしながら,その理論的扱いは有限温度効果が特に難しく,これまでは定性的な議論にとどまっていた。候補者は,不純物による乱れと電子相関をともに考慮した理論を構築し,局在から遍歴への移り変わりを,温度と不純物濃度をパラメタとして定量的に明らかにした。
以上のように,大槻氏は、自ら理論的手法を開発し,固体物理学の基本的問題に対して信頼できる結果を出してきた。よって、大槻氏は泉萩会奨励賞相当と判断される。
選考委員会は9月8日と9月15日の2回開催された。
森田記念賞の候補者は、前年度に推薦された2名のみで、新たな推薦はなかった。他方、泉萩会奨励賞の候補者は、専攻長推薦の3名であった。これら5名の候補者に対して業績等を検討した結果、各候補者の推薦区分を無視して、合わせて適任者を選考することとした。
慎重審議した結果、本年度の森田記念賞には三好由純氏(平成8年地球物理学科卒)、泉萩会奨励賞には是枝聡肇氏(平成7年物理第二学科卒)と萩野浩一氏(平成5年物理第二学科卒)を推薦することが全会一致で決定された。
以上については、10月23日の理事会で承認された。
| 受賞者氏名 | 是枝 聡肇 平成12年物理学第二専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教 |
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| 受賞の業績 | 高分解能光散乱分光による量子常誘電体の低エネルギー素励起の研究 (A High-resolution Light-scattering Study on the Low-energy Excitations in Quantum Paraelectrics) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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是枝氏の受賞理由は、代表的な"量子誘電体"チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)において、理論的に予測されていた第二音波の存在を、実験的に検証したことにあります[業績1,2]。この成果は、この種の物質において「温度の波動」、つまり「熱の固有状態」が存在することを示し、新しい物性研究の道を開いたものと高く評価されます。
同氏は、光散乱、主にブリルアン散乱を用いて物質の低エネルギー励起状態を研究している新進気鋭の若手研究者です。この低エネルギー領域(1000 GHz以下、特に注目するのが100 GHz以下のエネルギー)では、分光装置の分解能が重要な要因となってきます。同氏は、単一モード発振のアルゴンイオンレーザとサンダーコック型のファブリーペロー干渉計を組み合わせた高分解能光散乱分光装置を開発し、使用してきました。本実験では、はじめに、SrTiO3を含むいくつかの物質の低エネルギー励起、特に熱拡散によるレイリー弾性散乱ピークと特異な非弾性散乱ピークの詳細な温度依存性を測定しました[業績1]。この研究から、SrTiO3に注目することになります。さらに、新しい手法として、「フォノン気体」に対して非平衡熱力学方程式から動的構造因子を導き、解析に用いました[業績2]。"測定分解能の向上"、"いくつかの物質による測定"、"新しい解析手法の定式化"と段階を踏んだ努力と成果の積み重ねがこの結果を生んだことは明瞭です。このような継続的な努力は、極めて高く評価されます。
| 受賞者氏名 | 萩野 浩一 平成10年物理学専攻博士課程修了、東北大学大学院理学研究科物理学専攻准教授 |
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| 受賞の業績 | 低エネルギー重イオン核融合反応の理論的研究 (Theoretical study on low-energy heavy ion fusion reaction) |
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| 受賞の対象となった論文 |
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萩野氏は原子核物理学における最も基本的な問題の1つである低エネルギー重イオンの核反応について,高精度なモデルを開発するとともに,実験データからポテンシャル形状の情報を取得する道を拓き,さらにその手法を核構造解析に応用するなど原子核反応,原子核構造の統一的理解に多くの功績を挙げております。
クーロン障壁以下の低エネルギー領域における重イオン核反応は量子トンネル効果を通じて進行するため,反応断面積がポテンシャル障壁の形状に極めて敏感で,散乱核の励起すなわち結合チャンネル効果の影響を強く受け,モデル化が困難でありました。萩野氏は,結合チャンネル法に基づく理論的枠組みを検討し,従来の線形結合モデルは不十分で高次の効果が重要であることを見出すとともに,振動励起モードとの結合を含めて高次の効果を考慮する新たな手法の開発に成功しました。これによって,反応断面積の理論的予測精度が大幅に向上するとともに,反応断面積データから変形の符号を含めて原子核のポテンシャル形状を詳細に知ることが可能になりました。また,萩野氏がそのモデルを基礎に開発した計算コードは,世界各地で重イオン核反応データの解析に用いられ,重要な役割を果たしています(業績1)。
さらに萩野氏は,この手法がハイパー核構造の研究等にも応用できることを示すなど,核反応,核構造という従来の枠組みを越えてより幅広い視点から原子核を理解する道を模索し,成果を挙げております(業績2)。
よって,萩野氏の研究は今後の展開が大いに期待され,泉萩会奨励賞に値するものと評価されます。