東北大学理学部物理学科オープンキャンパス(平成21年7月30日)
日時: 2009年7月30日(木)〜31日(金) 10:30 - 16:00(両日とも)
会場: 理学総合棟、物理B棟、ニュートリノ科学センター
案内: http://www.phys.tohoku.ac.jp/open_campus/2009/index.html
30、31の両日、本学のオープンキャンパスが行われ、県内外から進学を目指す高校生らが訪れました。理学部物理学科では、体験授業や物理サイエンスカフェ、懇談昼食会、研究室紹介などのイベントを開きました。研究室紹介では、学生らが中心となり、手作りの装置やポスターなどで研究をわかりやすく紹介しました。
懇談昼食会のようす。何を学ぼうかと悩む高校生に「勉強しているうちに、自分のやりたいことがわかってくる」とアドバイスする教員ら
物理サイエンスカフェ「素粒子から迫る宇宙」のようす。宇宙の進化に関する研究はどこまで進んでいるのか、宇宙の歴史を理解する上でなぜ素粒子の知識が必要なのか。これらのテーマについて、最近の話題を諸井健夫准教授が紹介した。
藤井崇史さん(修士1年)
物理学はエネルギーで領域を分類することができる。その中でも高エネルギー(メガエレクトロンボルト、あるいはそれ以上)の物理学を研究するのが我々、素粒子理論。「素粒子」と言うと小さいイメージがあると思うが、小さくなればなるほど高いエネルギーを消費する領域だと思って良い。その「素粒子」と「宇宙」がなぜ関係するのか。実は、宇宙のはじまりは高エネルギー状態だった。よって素粒子の世界を研究すると、宇宙のはじまりがわかる。つまり、小さな世界と大きな世界をつなげる研究をしている。
古川大さん(修士2年)
物性理論とは、物性(物の性質)を解明するために、自然現象を数学や物理で解析計算(手で計算)し、コンピュータを用いて数値計算(シミュレーション)することで、物性を解釈する研究分野。我々のグループの対象分野は「カーボンナノチューブ」という、1991年に発見され、様々な分野で応用が期待されている物質。これまでシリコンを用いていた半導体物質は、その微細化に限界を迎えている。そのシリコンに代わる物質が、カーボンナノチューブだと言われている。私はカーボンナノチューブの電気物性(電気的な性質)を解釈するために、解析計算やコンピュータを用いたシミュレーションを行っている。
済木健太さん(修士1年)
人工構造物質における新奇な光応答の物理を研究する研究室。自然界の物質は、全て正の屈折率を持つが、光の波長よりも充分小さい構造をうまくデザインすると、屈折率を1より小さくしたり、さらには負にしたりすることができる。これによって反射なしに光の伝搬方向を変え、物体のまわりを迂回して光を通すことができる。このようなもので物体を囲むと中身が見えなくなる現象が起こり、透明マントが実現できることになる。
千葉惇さん(修士1年)
物質を構成する最小単位である原子核や、あるいは原子核を構成する素粒子の性質を探る研究室。測定時に用いる様々な実験機器を簡素化したものを今回、展示した。目に見えない原子核や素粒子をどのように測定するのかを目に見える形にして理解してもらうことを目的とした。実感が湧かない小さな世界だが、このような素粒子の世界があることを知ってもらいたい。
早川純一朗さん、新井田佳孝さん(博士1年)
ナノスケールの低次元構造をもつ半導体では、量子効果が顕著に表れ、強磁場下での量子ホール効果に代表されるような新たな物理現象が次々と発見されている。我々の研究室では、熱揺らぎを極限まで抑えた極低温の環境で、電気伝導測定、光学測定を駆使してキャリア相関、スピン相関をキーワードに研究を行っている。半導体量子構造における物性研究は、将来の量子コンピュータに繋がる研究としても大きな期待がもたれている。
滝口剛司さん(修士2年)
量子力学とコンピュータを用いて、原子核の形や、原子核がどのように壊れるのか等、原子核の性質を理論的に調べる研究室。地球上には存在しない人工的な原子核の実験データを、説明できるような理論を考えている。展示では、原子核の基本的な事柄について、クイズ形式で説明。「Q.ウラン238はどんな形でしょうか?」 1)球形 2)レモン形 3)星型 4)立方体
※答えは2)
根岸健太郎さん、本田喬大さん、高橋範行さん(修士1年)
自然界がどのような物理法則で成り立っているのかを知りたい。ニュートリノとは、物質を構成する最小単位である素粒子の仲間。最小の粒子であるニュートリノを知ることで、この宇宙のはじまりから今の宇宙の姿まで、その解明につながる。