イベントレポート

平成21年度総会・講演会・懇親会(2009年10月31日)

名称:平成21年度 総会・講演会・懇親会
日時:10月31日(土)15:15〜20:00(受付15:00〜)
会場:KKR仙台(宮城県仙台市青葉区錦町1丁目8番17号)



本会の平成21年度総会・講演会・懇親会が10月31日、仙台市内のホテル「KKR仙台」にて開催され、本会員36人が参加しました。本稿では、当日のレポートとともに、「森田記念賞」ならびに「泉萩会奨励賞」表彰者へのインタビューをご紹介します。



■平成21年度総会・講演会・懇親会 プログラム

15:15〜17:15 講演会
◆講演Ⅰ「物質反物質対称性の謎:小林―益川理論とビッグサイエンス」
 講師:山本 均 先生(ニュートリノ研究センター教授)
◆講演Ⅱ「方向2色性:時間/空間反転対称性の破れと光」
 講師:有馬 孝尚 先生(多元物質科学研究所教授)

17:20〜18:00 総会
 1.平成20年度会計報告・監査報告並びに経過報告
 2.平成21年度収支予算案
 3.森田記念賞・泉萩会奨励賞授与式
 4.その他

18:10〜20:00 懇親会


■ 平成21年度総会・講演会・懇親会 レポート

10月31日に仙台市内のホテル「KKR仙台」で開催された、平成21年度本会総会ならびに講演会のようす

 本会の平成21年度総会ならびに講演会が10月31日、仙台市内のホテル「KKR仙台」にて開催され、36人の本会員が参加しました。

 今回の講演会では、ニュートリノ研究センターの山本均教授による「物質反物質対称性の謎:小林―益川理論とビッグサイエンス」と題した講演がありました。続いて、多元物質科学研究所の有馬孝尚教授が「方向2色性:時間/空間反転対称性の破れと光」を演題に講演しました。



ニュートリノ研究センターの山本均教授による「物質反物質対称性の謎:小林―益川理論とビッグサイエンス」と題した講演会のようす

多元物質科学研究所の有馬孝尚教授による「方向2色性:時間/空間反転対称性の破れと光」と題した講演会のようす

 総会では、すべての議題が原案どおり承認されました。また議長は検討中の「サマースクール構想」についても触れ、「来年の夏休みに入った頃、1〜2年生を対象に2日間ほど、現代のトピックスに沿うことを中心にやっていきたい」と話していました。

森田記念賞授与式のようす

 今年度の「森田記念賞」には、平成8年宇宙地球物理学科卒の三好由純さん(名古屋大学太陽地球環境研究所助教)が選ばれました。森田記念賞は、物理科学分野ですぐれた業績をあげた本研究科関係の若手研究者を表彰する学術賞で、元・本会長である森田章東北大学名誉教授のご配慮を受けて、平成17年度に創設されたものです。(※これまでの表彰については、こちらのページをご覧ください)

泉萩会奨励賞授与式のようす

 泉萩会奨励賞には、平成7年物理第二学科卒の是枝聡肇さん(東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教)、ならびに平成5年物理第二学科卒の萩野浩一さん(東北大学大学院理学研究科物理学専攻准教授)が選ばれました。

 泉萩会奨励賞は、物理科学分野で特色があり将来性に富む業績を上げた本研究科関係の若手研究者を表彰する学術賞で、佐藤繁東北大学名誉教授のご配慮を受けて、今年度新たに設置されたものです。

今年新たに「泉萩会奨励賞」を設置した佐藤繁東北大学名誉教授

 設置の趣旨について佐藤さんは「国立大学の法人化が予想以上に、教育や研究の効果、即効性を求めているように見える。これから将来ある若い研究者が萎縮して、時間がかかる地味な仕事を避ける傾向になることが心配だった。そこで先輩の先生方と一緒に、若い研究者を評価し勇気付けることで、将来につなげたかった」と話していました。


懇親会のようす

 総会の後は、同ホテルを会場に、懇親会が行われました。昭和27年物理卒の伊達宗行さん(大阪大学名誉教授)の音頭で乾杯し、和やかな雰囲気で親睦を深め、歓談のひとときを過ごしました。



総会後の記念撮影

※当日のようすは、フォトギャラリーでお楽しみください。

森田記念賞・泉萩会奨励賞 受賞者インタビュー

【森田記念賞】
三好由純さん(平成8年宇宙地球物理学科卒、名古屋大学太陽地球環境研究所助教)

※インタビューは、中高生向けの内容となっております。詳しい受賞理由は、第5回森田記念賞報告(平成21年度)をご覧ください。

森田記念賞を受賞した三好由純さん(平成8年宇宙地球物理学科卒)

―受賞の喜びを聞かせください

 母校から賞をいただき本当に嬉しいです。受賞は大きな励みになると同時に、「東北大の卒業生として、これからも頑張っていこう」と改めて気持ちを引き締める思いです。

―受賞対象となった研究内容について聞かせください

 受賞対象となった研究内容は、放射線帯における粒子速度です。

 宇宙というと、中高生の皆さんは遠い銀河や天文を想像するかもしれません。けれども人間が行けるような地球周辺も宇宙であり、そこでは粒子加速やオーロラ発生に代表されるような、非常におもしろいことが起こっています。

 遠くの惑星や天体では難しい、粒子加速を直接観測できる領域が、「ジオスペース」と呼ばれる地球周辺の宇宙空間です。このジオスペースのうち最もエネルギーの高い粒子が集まっている「放射線帯」で、粒子加速メカニズムの解明や、粒子の変動予報(宇宙天気予報)を行っています。

 エネルギーが高い粒子は、人工衛星の動作異常を引き起こしたり、宇宙での人類の長期滞在に大きな障害を及ぼしたりします。放射線帯の研究は、人類が宇宙空間で安全に安心して活動していくことにも貢献することができます。

―中高生へメッセージをお願いします

 私の専門である宇宙空間物理学は、人工衛星で直接観測したデータを、理論を通して研究していくダイナミックな学問分野。誰も見たことがないデータを見ることができる研究分野です。

 そのような面白い分野があることを中高生の皆さんにも知っていただき、それが宇宙天気予報の可能性を秘めていることも意識していただけると嬉しいです。

 この分野を研究できる大学は、日本では限られています。東北大学のスタッフ層の厚さは、この分野でトップクラス。ぜひ東北大学の青葉山キャンパスを訪ねてみてはいかがでしょうか。「今、何が面白いですか?」と聞いてみると、皆喜んで教えてくださる先生方ばかりですよ。

【泉萩会奨励賞】
是枝聡肇さん(平成7年物理第二学科卒、東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教)

※インタビューは、中高生向けの内容となっております。詳しい受賞理由は、第1回泉萩会奨励賞報告(平成21年度)をご覧ください。

泉萩会奨励賞を受賞した是枝聡肇さん(平成7年物理第二学科卒)

―受賞の喜びを聞かせください

 これまで地道な研究を続けてきましたので、受賞には縁が遠かったのですが、今回、ステップ・バイ・ステップの地道な積み重ねを評価していただいたので、非常に嬉しく思っています。

―受賞対象となった研究内容について聞かせください

 受賞対象となった研究内容は、固体における熱の伝わり方です。「量子常誘電体」として物性物理学で有名な物質「チタン酸ストロンチウム」で、理論的に予測されていた「第二音波」と呼ばれる現象を、実験的に確認しました。

 熱の伝わり方は普通、片方をあたためるとそこからじわじわと広がっていきます。これが「熱伝導」という現象で、大学では熱伝導方程式を学びます。

 ところが今回見つけた「第二音波」という現象は、普通の熱伝導とは本質的に全く違っていて、「チタン酸ストロンチウム」を冷やすと、熱が波として伝わるという現象です。この「第二音波」と呼ばれる現象を、光散乱の実験で確認したということです。

 今後はレーザ光を用いて、熱の波をつくり出すことを目標にやっていきたいと思っています。

―中高生へメッセージをお願いします

 とにかく地道に、自分が面白いと思ったことを、「どうしてそうなるのか」をとことん突き詰めながら、根気良くこつこつとやっていくことが大事だと思います。

 それが将来の業績にどうつながるかとか、打算的なことは抜きにして。面白いと思ったことを突き詰めていくと、結果的に花開くのだと思います。

【泉萩会奨励賞】
萩野浩一さん(平成5年物理第二学科卒、東北大学大学院理学研究科物理学専攻准教授)

※インタビューは、中高生向けの内容となっております。詳しい受賞理由は、第1回泉萩会奨励賞報告(平成21年度)をご覧ください。

泉萩会奨励賞を受賞した萩野浩一さん(平成5年物理第二学科卒)

―受賞の喜びを聞かせください

 ただただ嬉しいです。これまで研究してきた成果がこのような形で表彰され、大変嬉しく思っています。

―受賞対象となった研究内容について聞かせください

 低いエネルギーで二つの原子核をぶつけたとき、原子核はプラスの電気を持っているため、普通は反発して近づけないのですが、量子力学というミクロな物質を記述する理論を使うと、反発力に打ち勝って近づくことができます。それが核融合です。

 そのぶつかるときに原子核が、普通の原子核ではなく、レモン形やみかん形のような変わった形をしている(=励起された)ときに、反発力に打ち勝って近づくことができる確率、つまり核融合の確率が大きくなります。そのようなことがなぜ起こるのかとか、どのような場合にそのような確率が大きくなるかを、理論的に研究しました。

 最近の実験は昔に比べて、ずっと精度が良くなってきています。それに伴って、理論の方も精度が良い計算をしなければ、実験と比べられなくなる時期に来ています。その精度が良い理論計算を行えるような理論的な枠組みをつくったのが、今回の受賞理由です。

―中高生へメッセージをお願いします

 いろいろなことに興味を持って、その中から自分のやりたいことを見つけてもらいたいですね。たとえば理系に興味がある人も、文系にも関心を持って。それが意外なところで役に立つことがあります。「絶対これしかない」とこだわらずに、いろいろなことに興味を持ってもらいたいです。

【お知らせ】「物理A棟」に関するエピソードや写真を募集します

現在改修工事中の物理A棟(09年10月29日時点)

 本会ホームページでは、現在改修工事中の本研究科「物理A棟」にまつわるエピソードや写真を募集中です。本会ホームページのフォトギャラリーにて、改修工事終了後の新しい「物理A棟」の写真とともに、会員の皆さまから寄せられたエピソードや写真をご紹介する予定です。E-mailまたは郵送にて、本会までお送りください。

(連絡先)
〒980-8578 仙台市青葉区荒巻青葉
東北大学大学院理学研究科物理学専攻物理図書室気付
TEL/FAX: 022-795-6492
e-mail: senshu(at)jimu.phys.tohoku.ac.jp
※(at)は@に置き換えてください。



「学問・芸術と社会」講演と討論の会(2009年8月22日)