第1回泉萩会主催「夏の学校」
【日時】平成22年8月2日(月)および3日(火)10:00〜16:15
【場所】2日:理学部第1共通講義室(理学総合棟2階203号室)
3日:理学部第3共通講義室(理学総合棟2階205号室)
泉萩会は、物理系学部学生の1年生および2年生(他学年・一般の参加も可)を対象に 、8月2・3日の両日、初の試みとして「夏の学校」を開催しました。講師は、竹内峯東北大学名誉教授(昭和32年天文学科卒)と田中正之東北大学名誉教授(昭和34年地物卒)が務め、名誉教授らの講義に、約15人の学部生やOBらが耳を傾けました。
◇宇宙の物理モデルおよび太陽
竹内峯 東北大学名誉教授(昭和32年天文学科卒)
先ず宇宙論の根底にある二つの原理である均質性と等方性とは何なのか、それから得られる宇宙モデルはどのようなものかという大局的な問題について講義する。次に太陽の構造および太陽放射の地球への影響がどこまで分かっているのかという疑問に答える。
◇地球環境の自然変動 ― その実態とメカニズム
田中正之 東北大学名誉教授(昭和34年地物卒)
地球環境は、地球の誕生から現在まで、過去46億年にわたって極めて複雑な変動を繰り返してきた。その変動の実態と変動メカニズムの解明に関する最新の科学的知見と未解明の問題点を分かり易く講義する。
物理系2年の日置壮一郎さん
現役の先生が自分の研究領域を話してくれるのもおもしろいが、今回の講義では、一歩引いたところから見た、スケールの大きな話でおもしろかった。
例えば、竹内先生の講義では、パワースペクトルをとる議論の中で、単に比較するだけでなく、人為的にそれを消して良いのか、その意味を議論していた点が素晴らしいと思った。
また、田中先生の講義では、今まで自分が見たことのない様々な例を挙げられていて、長い間、研究・教育に携わっているからこそ、その例を出せるのだなと感じた。また機会があれば、ぜひ参加したい。
物理系2年の宮本雅俊さん
ある仮説に対して「これは本当にそうなのか?本当に正しいのかどうかはわからない」などと、現役の若い先生なら言えそうもないことを率直に話してくれたのが、おもしろかった。いつもの講義では正しいことを教えられるが、今日は未解決の問題もたくさんあることに気づけて良かった。
学部生でもわかるような知識でわかりやすく話してくれたので良かった。最近授業で習ってきたことも出てきて、復習にもなった。短期集中型で、テスト関係なく気楽に聞けるのが良い。
竹内峯 東北大学名誉教授(昭和32年天文学科卒)
これから勉強するいくつかの概念について、頭の中に入れることは大事なこと。皆、一生懸命聞いて質問してくれて良かった。若い人と顔を見て話をできる機会はありがたい。この場を活用し、こちらも勉強させていただきたい。
泉萩会会長の田中正之 東北大学名誉教授(昭和34年地物卒)
昨今は地球温暖化などが話題になっているが、地球の誕生から現在まで約46億年にわたって地球は極めて複雑な変動を繰り返してきており、それを理解することが地球科学の大問題だ。我々の知識が深まった点もあるが、依然としてわかっていないこともたくさんある。それが非常に興味深いのだ。
理学、特に物理学とは、自然の真理を見極めること。わたしたちの身近には、非常に興味深い未解決の問題があることを知ってもらいたい。それに挑戦するのがサイエンス。若い人にはぜひ未解決問題に挑戦し、良い成果を挙げてほしいと願っている。
歴史的には、地球物理学は20世紀の中葉以降、物理学から分離独立した。物理学は本質、すなわち素過程を解明する学問であるのに対し、地球物理学が対象とする現象の多くは、多様な素過程が複雑に絡み合った複合過程であり、仮に関わる素過程がすべて解明されたとしても、それは現象解明の出発点に過ぎない。
このように物理学と地球科学は異なるものだが、とは言え、物理学的な思考はとても大切になる。素過程は出発点だが、複合過程にも物理学的な解明が必要となるためだ。物理学から生まれたからこそ、考え方の基本は同じである。
ものごとをどのように考え、どのような研究をすれば良いのか。これは本当に正しいのか、正しくないのか。自分が本当に納得できるのか、できないのか。そのような物差しを持つことが、科学者の基本的な態度である。そのような態度をわきまえた上での知識でなければ、単なる物知りで終わってしまう。そのようなことを、この講義を通じて、ぜひ若い人には考えてもらいたい。