イベントレポート

平成28年度泉萩会総会・講演会・懇親会(平成28年10月28日)

【名称】平成28年度泉萩会総会・講演会・懇親会
【日時】10月28日(金) 14:30〜19:00(15:00〜総会、16:00〜講演会、17:10〜懇親会)
【会場】東北大学 大学院理学研究科 理学合同C棟 C201号室(青葉サイエンスホール)


平成28年度泉萩会総会・講演会・懇親会が10月28日、本研究科理学合同C棟にて開催され、本会員24人が出席しました。本稿では、当日のレポートに加えて、「第12回森田記念賞」受賞者へのインタビューをご紹介します。


会長の佐藤繁さん(昭和39年物理卒)による挨拶

副会長の前田和茂さん(昭和50年物理卒)による挨拶

議長を務めた織原彦之丞さん(昭和39年物理卒)


 平成28年度泉萩会総会・講演会・懇親会が10月28日、本研究科理学合同C棟にて開催され、本会員24人が出席しました。総会の開催にあたり、まず会長の佐藤繁さん(昭和39年物理卒)から、「本会の趣旨は、会員相互の親睦はもちろんのこと、現役の方々に対して、ささやかながら、仕事を評価・表彰して励まし、将来につなげることが大切」と挨拶がありました。次に、副会長の前田和茂さん(昭和50年物理卒)から、若手会員の獲得に関する課題と今後に向けた展望が語られました。総会では、織原彦之丞さん(昭和39年物理卒)が議長を務め、(1)平成28年度会計報告・監査報告並びに経過報告、(2)平成29年収支予算案、(3)役員改選、(4)会費のクレジットカード支払いについて、(5)その他、計5つの議題について審議され、全ての議題が原案通りに承認されました。

講演会の講師を務めた二間瀬敏史先生(京都産業大学教授、東北大学名誉教授)

講演会のようす


 総会に続いて開催された講演会では、二間瀬敏史先生(京都産業大学教授、東北大学名誉教授)が、「重力波の観測と重力波天文学の展望」と題して講演しました。2015年9月、アメリカの重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)によって10億光年かなたのブラックホール連星の合体から放射された重力波が直接観察されました。この合体の最終段階で放射された重力波のエネルギーは、観測可能な宇宙の全ての星や銀河が光で放つエネルギーの10倍以上大きいと推測されています。講演では、この観測の詳細と、日本のKAGRAを含めた重力波観測と重力波天文学の今後数年の展望、さらに将来の重力波観測と重力波天文学の展望について解説されました。

懇親会の司会を務めた落合明さん(昭和53年物理卒)

伊達宗行さん(昭和27年物理卒)による乾杯

第12回森田記念賞授与式


 講演後は懇親会が行われ、今年の司会は、落合明さん(昭和53年物理卒)が務めました。懇親会では、まず佐藤会長による挨拶の後、伊達宗行さん(昭和27年物理卒)による音頭で乾杯し、参加者同士で親睦を深めました。次いで、第12回森田記念賞および第8回泉萩会奨励賞の授与式が行われました。本年度の森田記念賞は、内田直希さん(東北大学地震・噴火予知研究観測センター准教授、平成11年宇宙地球物理学科卒)が「小繰り返し地震を用いたプレート境界の非地震性すべりに関する研究」の業績で受賞しました。また、泉萩会奨励賞は、後神利志さん(大阪大学核物理研究センター特任研究員、平成22年物理学専攻博士前期課程修了)が「7ΛHeおよび10ΛBe ハイパー核精密分光の成功」の業績で、同じく泉萩会奨励賞に、石垣美歩さん(東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任研究員、平成22年物理学専攻博士後期過程修了)が「銀河系の古成分恒星系の化学動力学に基づく銀河系の形成と進化の研究」の業績でそれぞれ受賞しました。授与式では、会長の佐藤繁さんが授賞者に賞状と賞金を授与しました。なお、各賞の趣旨や授賞理由などの詳細については、こちらのページ(森田記念賞泉萩会奨励賞)をご覧ください。さらに懇親会では、参加者らによるスピーチが行われ、和やかな雰囲気の中、思い出話などが語られました。


受賞者インタビュー

■第12回森田記念賞
 内田直希さん
 (東北大学地震・噴火予知研究観測センター准教授、平成11年宇宙地球物理学科卒)
 「小繰り返し地震を用いたプレート境界の非地震性すべりに関する研究」

内田直希さん(東北大学地震・噴火予知研究観測センター准教授)

—まずは受賞の喜びをお聞かせください。

 このたび、「森田記念賞」という、これまで過去に素晴らしい先輩方が受賞されてきた賞を頂き、とても光栄に思っています。推薦頂いた松澤暢先生、そして選考に関わって頂いた先生方に感謝申し上げます。

—今回の受賞対象となった研究について教えてください。

 私は地震の研究をしています。特に、東北地方の沖合で発生する地震、そして地震の周囲で起こっている "ゆっくりした滑り"を研究しています。通常の地震は地面が揺れて人が感じられるようなものですが、"ゆっくりした滑り"とは、同じ断層で起こるものですが、一週間から一ヶ月、場合によっては一年かけて人が感じるような揺れを起こさないでゆっくりと滑るものです。今回の研究では、同じ場所が繰り返しすべる「繰り返し地震」を用いる新しい手法で、"ゆっくりした滑り"の発生状況を調べました。

—今回、特にどのような点が評価の対象になったのですか?

 この研究のおもしろい点は、地震と"ゆっくりとした滑り"の間に相互にやり取りがあり、地震が"ゆっくりとした滑り"を引き起こしたり、"ゆっくりした滑り"によって地震が起こったりということがあることです。今回はその関係性を、観測データをもとにしてある程度量的に明らかにした点を、評価頂いたと思っています。

—これからの抱負について、お聞かせください。

 今回の"ゆっくりした滑り"に関する研究を、私たちは特に東北日本で行ってきました。最近、西南日本や沖縄、南西諸島の方でも、同様な現象が起こっていることがわかってきたため、そこでの地震と"ゆっくりした滑り"との関係を調べていきたいと思います。"ゆっくりとした滑り"は、観測が難しいため、これまであまり詳しいことがわかっていませんが、地震の発生に大きな役割を果たしていると考えられます。地震を起こす場所やその周囲で起こっている"ゆっくりとした滑り"現象を調べていくことで、地震の発生過程を明らかにしたいです。

—最後に、中高生も含めた若い世代へメッセージをお願いします。

 私は大きくみれば物理の研究をしていますが、身近なものの中から、自然の法則を見つけていくことは、おもしろいことだと思います。私の研究の場合は、実際の自然現象を相手にしていますが、過去ずっと先輩方が取ってきたデータをよく見ることで、気づくことがあり、それが結果につながりました。その背景には、今まで人が気づかなかった視点に加えて、技術の発展があります。コンピュータの発展により、20数年間のデータを一挙に解析できることが今はできるようになってきました。このような恵まれた時代にいるので、粘りつよく考えていくことで、多少なりとも新しい発見あったのかなと思います。これからの時代どんどんいろいろなことが「見える」ようになっていくと思います。色々な身のまわりのことから、自然に目を向けて、興味を持っていただくことができればいいなと思っています。

—ありがとうございました。


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