イベントレポート

平成29年度泉萩会総会・講演会・懇親会(平成29年11月11日)

【名称】平成29年度泉萩会総会・講演会・懇親会
【日時】平成29年11月11日(土)午後3時〜午後7時
【会場】東北大学大学院理学研究科 理学合同C棟 C201号室(青葉サイエンスホール)


 平成29年度泉萩会総会・講演会・懇親会が11月11日、本研究科理学合同C棟にて開催され、本会員27人が出席しました。本稿では、当日のレポートに加えて、「第13回森田記念賞」並びに「第9回泉萩会奨励賞」受賞者へのインタビューをご紹介します。


会長の佐藤繁さん(昭和39年物理卒)による挨拶

副会長の小原隆博さん(昭和55年地物卒)による挨拶

会計の松澤暢さん(昭和56年地物卒)


 平成29年度泉萩会総会・講演会・懇親会が11月11日、本研究科理学合同C棟にて開催され、本会員27人が出席しました。総会の開催にあたり、まず会長の佐藤繁さん(昭和39年物理卒)から、「同窓会としての取り組みを進める一方、財政状況は悪化している。次のステップに向けて見直しを行いながら、成長軌道に乗せたい。また、名簿に対する価値観も変容する中、同窓会としてのあり方も含めて議論したい」と挨拶がありました。総会では、副会長の小原隆博さん(昭和55年地物卒)が議長を務め、(1)平成29年度会計報告・監査報告並びに経過報告、(2)平成30年度収支予算案、(3)名簿発行について、(4)理事および監事の補充について、(5)その他、計5つの議題について審議され、全ての議題が原案通りに承認されました。

第13回森田記念賞授与式(石川貴嗣さん)

第9回泉萩会奨励賞授与式(永尾翔さん)


第9回泉萩会奨励賞授与式(対馬弘晃さん)

森田記念賞受賞講演のようす


 次いで、第13回森田記念賞および第9回泉萩会奨励賞の授与式が行われました。本年度の森田記念賞は、石川貴嗣さん(東北大学 電子光理学研究センター 助教)が「光子ビームによるクォーク・ハドロン物理の探究」の業績で受賞しました。また、泉萩会奨励賞は、永尾翔さん(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 助教、平成21年宇宙地球科学科(地物)卒)が「電磁生成したハイパー核崩壊π中間子分光法による重い水素Λハイパー核の研究」の業績で、同じく泉萩会奨励賞に対馬弘晃さん(気象庁気象研究所 主任研究官、平成22年地球物理学専攻博士後期課程修了)が「津波波源逆解析に基づくリアルタイム津波予測手法の開発」の業績でそれぞれ受賞しました。授与式では、会長の佐藤さんが授賞者に賞状と賞金を授与しました。また、今年度新たな試みとして森田記念賞受賞講演も行われ、多くの聴講者が集まりました。なお、各賞の趣旨や授賞理由等の詳細については、こちらのページ(森田記念賞泉萩会奨励賞)をご覧ください。

講演会の講師を務めた早坂忠裕先生(前東北大学大学院理学研究科長、地球物理学専攻教授,昭和57年天文及び地球物理第二(地物)卒)

早坂先生による講演のようす


 続いて開催された講演会では、早坂忠裕先生(前東北大学大学院理学研究科長、地球物理学専攻教授,昭和57年天文及び地球物理第二(地物)卒)が「地球の放射収支と気候」と題して講演しました。早坂先生は、地球温暖化問題は、人間活動が地球の放射収支のアンバランスを生み出したことに起因する気候変動の問題であることを、最新の研究結果から解説。近年、系外惑星や生命存在の可能性に関する研究が進む中、改めて地球をひとつの惑星として見た時、地球をどのように理解すればよいかを講演しました。また、今年7月に東北大学が指定された新制度「指定国立大学」の取り組みについても報告がありました。

懇親会の司会を務めた須田利美さん(昭和58年物理卒)

会長の佐藤さんによる挨拶と乾杯


懇親会のようす

懇親会でのスピーチのようす


 講演後は懇親会が行われました。今年の司会は須田利美さん(昭和58年物理卒)が務め、会長の佐藤さんによる音頭で乾杯した後、参加者同士で親睦を深めました。また森田記念賞並びに泉萩会奨励賞受賞者や参加者によるスピーチも行われました。参加者からは、「『研究第一主義』の伝統、『門戸開放』の理念、『実学尊重』の精神は、東北大学の遺伝子。時代が変化しても、それを忘れてはいけない」等の想いや、学生時代の思い出などが語られました。


授賞者インタビュー

■第13回森田記念賞
◆「光子ビームによるクォーク・ハドロン物理の探究」
 石川貴嗣さん(東北大学 電子光理学研究センター 助教)

石川貴嗣さん(東北大学 電子光理学研究センター 助教)

― 受賞おめでとうございます。まずは受賞の喜びをお聞かせください。

 このような栄誉ある賞をいただき、ありがとうございます。受賞により研究の業績を認めていただいたことで、これまでやってきたことは無駄でなかったことを再確認できました。私一人だけの研究ではなく、当センターの協力があってこその成果ですので、このたび栄誉ある賞をいただいたことはセンターとしての誇りでもあることが、私にとって最大の喜びです。

― 今回の受賞対象となった研究について教えてください。

 2002年5月に着任以来、GeV ガンマ実験棟の検出器群及び光子ビームラインの整備にずっと取り組んできました。正直申しますと、"研究"というより"お仕事"という感じで、その時はまさか、世界最先端の研究ができるなんて思っていませんでした。やっているうちにおもしろい現象が見つかり、小さなセンターでも世界最先端研究をやれるんだと、だんだん楽しくなってきました。最近では、6つのクオークが小さくくっついている奇妙な状態を新たに発見した可能性について論文を書くことができました。検出器自体に汎用性がありますので、今後も他にも奇妙な現象をたくさん見つけていくことが可能だと思います。それにより、クォーク・ハドロン物理の系統的な理解を進めていきたいです。

― 最後に、中高生も含めた若い世代へメッセージをお願いします。

 私たちの分野は特にそうですが、準備を進めてから結果が出るまで5年から10年の長い時間がかかります。途中で心折れそうになることもありますが、努力していると報われることがあります。ぜひ何かに集中し続けてください。

 また、クォーク・ハドロン物理を目指す若い方が増えることを望みます。素粒子のように最先端の印象を持たれないことが多い分野ですが、クォーク・グルーオン多体系も最先端の研究テーマですので、ぜひ目を向けていただきたいですね。メリットのひとつは、素粒子実験と比べて実験規模が小さく全体が把握できるレベルですので、自分がすべてやっている気になれる楽しい実験分野です。ぜひ皆さんにも目指してもらえたら嬉しいです。

― ありがとうございました。


■第9回泉萩会奨励賞
◆「電磁生成したハイパー核崩壊π中間子分光法による重い水素Λハイパー核の研究」
 永尾翔さん(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 助教、平成21年物理学科卒)

永尾翔さん(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 助教、平成21年物理学科卒)

― 受賞おめでとうございます。まずは受賞の喜びをお聞かせください。

 このたびは、このような名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。私の研究を完成させるにあたって、数々の方にお世話になりました。特に、現地で共に汗水流して研究を行ったドイツ・マインツ大学の研究者の方々、そして中村哲教授はじめ、東北大学原子核物理研究室の方々に御礼申し上げます。

― 今回の受賞対象となった研究について教えてください。

 ドイツ・マインツ大学が有する電子線加速器MAMI-Cと高分解能分光器Spek-Cを利用して、「ラムダハイパー核」(通常の原子核に、陽子・中性子の仲間であるΛ粒子を加えたエキゾティックな原子核)の質量をこれまでの10倍の分解能で測定できる新しい手法を完成させました。この研究は、「荷電対称性」(この世界を構築している物質・力を説明するための重要な考え方のひとつです。日本・アメリカをはじめ、世界中で研究されています。)が破れているかどうかを明らかにするために重要な成果となりました。この手法をさらに推し進めることで、将来、ラムダハイパー核のさらに詳細な解明が進むでしょう。

― 今回、特にどのような点が評価のポイントになったのですか?

 新しいアイディアと最新の技術を駆使することで新しい高分解能実験を開拓した点が、評価のポイントになったと思います。本研究のアイディア自体はとてもシンプルですが、それを実現するための手法が非常に難しいため、実験当初は「無理だ」というコメントをいただいたこともありました。そんな中、電子線を用いてハイパー核をつくるという、我々ハイパー核分野で新たに確立した手法と、自分のアイディアを結びつけることにより、この実験を成功に導きました。

― これからの抱負について、お聞かせください。

 ひとつ目は、本研究をさらに発展させることです。成功したと言っても、できたばかりの研究で課題も多々含んでいますので、それらを解決し、質量分光の非常に有力な手法のひとつとして、世界に宣伝したいです。

 ふたつ目は、原子核研究もしくはハイパー原子核研究といえば、私の名前が出るくらい、世界的に活躍できる研究者になりたいです。そのために、本研究とはまた別にプロジェクトを立ち上げています。

 三つ目は後継者の育成です。次世代の研究者を育てるべく大学院生の教育を進めています。日々教育内容を改良しながら、世界最先端の研究を共に進めることで、世界に通用する人材を育成したいです。

― 最後に、中高生も含めた若い世代へメッセージをお願いします。

 本研究を進めるにあたり、様々な困難がありました。全然うまくいかないこともあれば、「もう駄目だ」と思ったことも多々ありました。けれども、「自分はできる」と信じ、最後まで歯を食いしばって頑張った結果、素晴らしい研究成果を出せたと思っています。無駄だと思える作業も思わぬ成果につながっています。何事も諦めず、やり続けることが重要です。

― ありがとうございました。


◆ 「津波波源逆解析に基づくリアルタイム津波予測手法の開発」
  対馬弘晃さん(気象庁気象研究所 主任研究官、平成22年地球物理学専攻博士後期課程修了)

対馬弘晃さん(気象庁気象研究所 主任研究官、平成22年地球物理学専攻博士後期課程修了)

― 受賞おめでとうございます。まずは受賞の喜びをお聞かせください。

 学生時代(修士課程1年)から13年間ずっと進めてきた研究内容で今回受賞しました。これまでの研究内容を泉萩会からも認めていただけたことを大変嬉しく思います。東北大学の先生方が厳しくも温かくご指導してくださったこと、現在の職場である気象庁の周りの仲間達が支えてくれたおかげでここまで辿り着くことができました。ご指導いただいた先生方に改めて御礼申し上げます。

― 今回の受賞対象となった研究について教えてください。

 津波警報の正確さを高めるため、沖合で捉えられた津波の観測記録を用いて、津波が沿岸に来るより前に、早く正確に津波を予測する方法をつくる研究です。東北大学在籍中に研究を始め、その方法の"根っこ"になる部分を完成させました。それを引っ提げて気象庁に入り、気象庁の津波警報システムにその方法を導入するための仕事を進めてきました。やっと今、気象庁の警報システムに導入することができ、現在、気象庁の中でテストを進めているところです。そこで良い成績を得ることができれば、近い将来、警報の発表に使われることになるのではないかと思います。

― 今回、特にどのような点が評価のポイントになったのですか?

 理学的な分析方法に基づく研究成果が、防災という観点で直接、社会の役に立つ点が今回の評価ポイントになったと思います。

― これからの抱負について、お聞かせください。

 今まで以上に、津波警報の正確さを高めるため、予測手法の改良をさらに進めていきたいです。また、もともと地震や津波の発生メカニズムにも強い興味を持っていますので、今後は津波警報のみならず、発生メカニズム解明の研究も同時に進めていきたいと思っています。

― 最後に、中高生も含めた若い世代へメッセージをお願いします。

 自分が「おもしろい」と思ったことは、とにかく試してみることが大事だと思います。私の研究は最初、お手本となるものがなく、合っているか合っていないかはわからないけども、色々試してみるところから始めました。中にはうまくいかず、結果的には捨てたものも多くあります。ただ「間違っているだろう」と思ってやらなければ何も前へ進まないので、とにかく最初は手探りでもいいから、自分の思ったことをやってみる。そして、それを繰り返すうちに、いつかは成功につながると思います。

― ありがとうございました。